起業や新商売に借金はつきものだ。
けれども、事業を取り巻く環境や私生活の急変によって、借金に追いつめられるケースも珍しくない。
こんな場合でも決して慌てないことが肝心。
「強い恐怖心」「強迫観念」を持つのはやめよう。
現在は、債権者を守る法律が整備されている。暴力団などの反社勢力が借金取りに関わることはできない時代だ。
それを知っているだけで、心理的な負担はかなり軽減されるだろう。
「借金取りは怖いものだ」。この観念を捨てること。
誰もが抱える「借金」というリスク。予期せぬ事態でパニックにならないために

最高で約14億円の借金を背負った筆者だが生まれ故郷の北海道で、今はけっこう楽しくやっている。
借金はしないに越したことはないが、起業や商売を始める場合に借入は避けて通れないもの。
私生活においても車を買う、家を建てるなどのケースでローンという名の借金を背負う。
また、近年は金利の付く奨学金返済で苦しむ人も多いと聞く。
「奨学金」と言えば聞こえは良いけれど、返済義務があり金利が付く以上は借金以外の何ものでもない。
このように多くの人は長い人生において、何らかの借金を背負って生きている。
分相応の借金であれば、大した問題ではないだろう。
だが、人生何が起きるか分からないもの。未来のことなど誰にも予測できない。
20年前にはこんな予測が世間を騒がせたことをご存じの方も多いはず。
AIの普及により、事務職、銀行の窓口業務、バス・タクシー運転手、通訳・翻訳者、記者・ライターなどの職業はなくなると言われたものだ。
あなたの周囲を見て、どうでしょうか、なくなった職業が一つでもありますか?
さらに15年前は介護士、看護師はほぼいなくなるとまで予想されたものですが、両者ともに人手不足が深刻なのはご存じのとおり。
人間の予測なんてこんなのもの。だが、全く懲りることなくメディア関係者やエセ科学者は、今日も予想という名の嘘をでっちあげるのだからたまらない。
話がそれてしまった。
予期せぬ事態に見舞われて初めて、人は借金の負担、怖さに気づくもの。
しかし、借りたものは、今更どうしようもない。自分の生活や事業を取り巻く環境が急変したからといって、帳消しにならないのが借金だ。
このような予期せぬ事態に陥った時に最も意識するべきことは、「借金の取り立てを怖がらない」こと。
書留郵便や内容証明郵便で督促状が届くと誰でも慌ててしまうもの。思わずパニックになる人もいることだろう。
だが、落ち着いて考えよう。慌てても、パニックになってもできないものは、できないのだ。
督促された借金を返すために、別なところから借り入れる。これは、後々に苦しみを先送りするだけ。
先送りになるだけではない。悩み苦しみがさらに大きくなるのですから、実に厄介なのだ。
筆者が実際に経験したこと、体験したことを書くので、そこから「慌てないこと、恐れないことが何よりも大事」であることを、ぜひ読み取ってもらいたい。
「銀行ができるのは内容証明で書類を送りつけることだけ」救われた銀行員の一言!
「社長、K銀行のA課長から電話です。どうしますか?」。
女子社員が電話を保留にして、そう言う。
「また、返済の催促か・・・・・」と思いながら電話に出たのだが、課長は思いもよらないことを言った。
あの言葉は、今でもはっきりと記憶している。決して頭の片隅を離れることはない。
「社長、大変でしょう。でも、社長はまだ若いから、きっと再起できると思います。我々としては具体的に何もしてあげられませんが、頑張ってください。」
「ありがとうございます。」
「それと社長、銀行からたくさんの内容証明が届くと思いますが、銀行ができるのはその程度のことだけですから」
予想もしなかった意外な言葉ばかりだった。あの時の、あの課長の言葉に、どれほど勇気づけられたことだろう。
特に「銀行は内容証明を送ることくらいしかできない」の一言は、私の考えに大きな影響を与えたのだった。
私はこう考えた。
「そうか、他の銀行もノンバンクもK銀行と同じようなものだ。だからS信用組合への対応を最優先で考えればいいんだ」
ただし、これについては誤解を避けるために、少し解説しておかなければならないだろう。
当時、担保として抵当権が設定されていたのは、私個人の自宅と社員用の社宅、ゴルフ会員権などだった。
ゴルフ会員権をのぞいた土地建物は、すべてS信用組合が一番抵当として押さえていた。したがってK銀行は二番抵当だった。
だが、当時はバブル経済の崩壊により土地は大暴落。大幅な担保割れを起こしていたのだ。
つまりK銀行は担保権を行使しようにも、できない状態だった。
B信用組合とは非常に親しくしていたし、上層部に知り合いがいた関係でそれほど切羽詰まった交渉にはなっていなかった。
しかし、数年後にはS信用組合そのものが経営破綻したために自宅は手放すことになるのだが、それはまた別問題だ。
覚えておくべきは、「借金取りは怖くない」ということ。
「度を超えた恐怖」「パニック状態」は判断を狂わせてしまう。冷静な判断の妨げになるのだ。
命をとられない限り、なんとかなるもの。再生も再起も可能だ。自分の心から「恐怖」を取り除こう。
内容証明郵便とは?
内容証明とは、「いつ、誰が、誰に、どんな内容の手紙を出したか」を郵便局が公的に証明してくれる郵便のことだ。
借金の督促で、銀行や債権者が内容証明を使う理由は以下の通りだ。
▲「言った・言わない」の防止 :「そんな督促は受け取っていない」という言い逃れを封じるため
▲心理的なプレッシャー :独特の書式で届くため、受け取った側に「これはただ事ではない」と強く意識させる
▲法的アクションの前触れ :「次の返済がなければ裁判や差し押さえに動きますよ」という最終通告の意味合いとして使われるのが一般的
内容証明を恐れる必要がない理由
記事の中で銀行の課長が「銀行ができるのは内容証明を送ることくらい」と言ったのには、明確な理由がある。
1,それ自体に「強制力」はない: 内容証明が届いたからといって、その瞬間に銀行員が家に押し入ってきたり、勝手に銀行口座からお金を引き抜いたりすることはできない
2,あくまで「手紙」である: あくまで「郵便局が内容を証明している手紙」に過ぎない。法的な強制執行(差し押さえなど)を行うには、その後に裁判所を通した手続きが必要となる
3,交渉のテーブルに乗るチャンス :債権者が「本気で回収を考えている」というサインなので、逆に言えばここが「今の状況では返せない」と相談や交渉を始めるタイミングにもなる
ポイント
内容証明は「攻撃」ではなく、法律に則った「手続きの記録」です。中身を正しく把握し、パニックにならずに次の対策を練るための材料と考えよう。
暴力団の取り立ては過去の話。法務大臣の許可を得た「サービサー法」があなたを守る
S信用組合がつぶれるとわかったとき、私は信用組合の顧問弁護士と会うことにした。
その弁護士から言われた言葉にも勇気づけられたし、忘れることができない会話だった。
「○○さんの債権は、整理回収機構(RCC)に売られることになるでしょう。サービサー法のお陰ですよ。
ひと昔前なら債権は暴力団に売られて、身ぐるみはがされてしまい自己破産しかありませんでした。自己破産したからと言って取り立てをあきらめる連中でもありませんが。
でも、サービサー法ができたので暴力団は債権を買えませんから。
もし、暴力団関係に債権が渡ったら、売った方も買った方も罰せられます。だから、心配はいりません。
債権を買えるのは法務大臣の許可をもらったところに限られます。だから法律で決められた範囲でしか取り立てもできませんし。」
「命までは取られない」冷静な判断こそが再起への第一歩
サービサー法の正式な名前は「債権管理回収業に関する特別措置法」。
簡単に言うと「借金の取り立てを、ちゃんとした会社だけにやらせましょう」という法律で、これがサービサー法のいちばん大事なポイントだ。
昔は、借金の取り立てがめちゃくちゃだった。
▶真夜中に電話する
▶家に押しかける
▶ワザとに入れ墨を見せるような、野蛮な奴が来る
▶脅し文句を並べるのが常とう手段
▶家のドアに「借金返せ!」などの紙を貼る
「これではダメだ。取り立てをするなら、ルールを守る会社だけにやらせよう」
借金を抱えた人が、脅されたり嫌がらせされたりしないようにする。
これがサービサー法のできた背景だ。
債権買取会社(サービサー)の設立にあたっても、厳しい制限がある。
・常勤の取締役に必ず弁護士が入っていること
・暴力団など反社関係者は一切排除する
・資本金5億円以上
この三条件を満たさなければならない。
1998年10月に法律が成立、公布され、1999年2月に施行された法律だ。
もしも、借金の取り立てで脅かされたり嫌がらせをされた場合や反社と思われる人間が来たときは、迷わず警察へ行くことを薦める。弁護士に相談してもよいだろう。
借金で命を取られることはない。冷静になることが再起への第一歩であることをしっかりと認識しよう。
「借金取りは怖いものだ」、まずはこの観念を捨てることだ。


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